手を止めて ふと思うこと
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


何だかんだと行事も多い、長くて忙しい一学期も、
気がつけば…あとは期末テストを残すのみという頃合いになだれ込んでいて。

 “本来だったなら、
  町のあちこちに笹飾りを見やって、
  ああ七夕だねぇって感慨にふける風流さがほしいところだけど。”

その方が断然風情もあるのになぁ。
だって笹の葉飾りは涼しげだし、
それにちなんだお祭りを催しているところだってあるのだから、
早めの夕涼みにって宵の中をお出掛けするのってムーディじゃないのよ、と。
ちょっぴり根を詰めすぎたその息抜きにと、
愛用のスマホを手に取り、何の気なしにメールをチェックしてみたり。
いづこも同じ何とやら、なのか、
昨日までは“地学の範囲広すぎ〜”とか、
いかにもな短さで“漢文、、、”とだけの呟きもどきが届いてもいたものが、
明日からまずはの初日という今日はさすがに、
平八からも久蔵からも音沙汰らしいものは聞こえてこない様相で。

 “ましてや、勘兵衛様からなんて…。”

少なくともこの春からこっちの数か月なんて、
こちらからのご機嫌伺い、
ちょっとしたご挨拶へは完全に無反応の構えだったし、

 “何度か、応答があったのはといや…。”

細い指先を形のいい口許へチョンと当て、
えっとぉと思い出してみて辿り着いたのが、

 “…あ・そっか。”

微妙なお顔になったのもしょうがない。
うっかり送信先を切り替え損ねて、平八へ送るつもりの、

 『こちらは準備万端でげすよvv』

なんていう、
他の人ならどうだか知らぬが、
彼女らの保護者という立場にあれば
何だなんだと心穏やかではいられないよな一言、
送ってしまったその途端、

 『何を構えていての準備万端だ?』

あの、メカ音痴の警部補殿が
速攻という素早さでお返事くださったのが
くっきり思い出されてしまった七郎次だったりし。

 “あれはこっちこそ“なんだかなぁ”でしたよね。”

そりゃさ、
急を要するものとか、逆に根気よく周囲を固めて取り囲んで
方々へ根回しもしまくってっていうややこしい案件とかに
従事している敏腕警部補さんだから、
今日は暑いですねとか、にわか雨ですねとかいう取るに足りない呟きへ
いちいち返事するよな暇なんてないんだろうけれど。

 “でもさぁ…。”

アドレス帳の中の“勘兵衛様”という宛名を手の中へ見下ろして、
学園内でも人気を集める嫋やかな美貌の細おもて、
ふうという物思いたっぷり含ませた溜息つきで
曇らせてしまわれる金髪のお嬢様。

 久蔵殿は最近まで“自撮り”のことを地鶏だと思い込んでたんですってよ、
 インスタの話になって、
 SNSはあんまり関心がないなぁなんて話が進んでいくうちに、
 アタシやヘイさんと久蔵殿とで 何だか噛み合わなくなってきて。
 
 “何で皆して
  地域地域の鶏の写真の話ばかりって。
  最近の流行か?なんて
  キョトンとするんですものvv”

まあまあなんて可愛らしいことかって、
ヘイさんとついつい顔を見合わせましたっけね。
吹き出しては可哀想かも、
いやいや、ここで理解が追い付いたこと、
他で恥をかかないでよかったって思ってもらわねば、なんて。
事情が通じている者同士だからこそ
彼女らしいとか可愛らしいとかいう
何層か奥深い可笑しさもあって、
それは面白かったことですのにね。
こうも距離と時間が離れていては、
そんなとびっきりの、しかも限られた人同士でしか通じないという
ちょっとした特別感もある話題さえ、
話して差し上げられないのが、

 “なぁんか口惜しいなぁ。”

だってだって、ヘイさんは早速にもゴロさんに話したに違いない。
分別のあるゴロさんはきっと、
次に久蔵殿と顔を合わせても、
ついつい吹き出すような、ヲトメ心を傷つける真似はしなかろうし。
久蔵殿本人だって、
ご両親にまではわざわざ話はしなかろけれど、
兵庫せんせいには“おかしいのかな?”程度の素振りは示すかも。
そいでもって兵庫さんなら
切れ長の目をまん丸くしてから、
しょうがない奴だなぁなんて苦笑をして
可愛げ可愛げvvと言わんばかり、
あのふわふかな久蔵殿の金の綿毛をポンポンするんだろうな。

 “アタシだけ
  そういうふうに語れないなんて不公平〜〜〜〜。”

もはや、勘兵衛様と話が出来ないのが詰まらぬのか、
久蔵さんの可愛らしいエピソードを、自分だけ誰にも話せないのが憤懣なのか、
どっちなんだか判らなくなりつつある白百合さん。
机の上に広げられてた、日本史の分厚い教科書を、
興味も薄い眼差しで見下ろしてみたものの、

 「……。」

関心ないないと一瞥だけで済ますかと思いきや、
見開きの左上に小さな写真が載っていたのへ、出来心からちょちょいと加筆。
おひげが誰か様を想起させたので、ついでに髪も豊かにして差し上げて、
波打ってるところまでもを忠実に描いてから、

 「……。/////////」

自分でぷくくと吹き出すところは、
やはりやはり箸がころげても可笑しいお年頃の女子高生。
さぁさ、しっかりお勉強しなくちゃねと気を取り直し、
三人娘でお揃いにした、ねじ飴みたいな軸色のシャープペンを構えなおして。
成績が良かったら、そうよ、有無をも言わさずお茶に付き合ってもらいましょう。
そのっくらいなら出来ないか、征樹様に訊いとこうと、
やっとのこと心落ち着くやさしい想いに辿り着き、
口許やんわりほころばした、白百合様だったらしいです。





   〜Fine〜  15.07.05.


 *何だかなぁなネタですいません。
  そういや最近
  勘兵衛様ご自身が出てきてないような。
  三華様だけじゃなく、
  大人の皆さんの活劇も
  たまには書いた方がいいのかなぁ。

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

メルフォへのレスもこちらにvv


戻る